株式会社Creators Team 取締役の長瀬眞承です。
私はBlogにて、社内で担当している新規事業に関連する生成AIについて最近の動向を整理しつつ、私の意見も絡めながら解説して行きたいと思います。前半は学習段階における課題について考察し、後半は生成・利用段階における課題についての考察を行いたいと思います。
今回は生成AIと著作権について、2024年2月29日に文化庁より公表された資料「AIと著作権に関する考え方について」(以下、「本資料」という)を参考に、重要だと感じた部分を抜粋しつつ、私のコメントを加えながら、生成AIの今後を考察して行きたいと思います。
前提
まず基礎知識として、著作権法第30条の4を紹介します:
著作権法第三十条の四
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
昭和四十五年法律第四十八号 著作権法 第30条の4
上記は著作物を使用する際の現法になります。
注意点としては、「次に掲げる場合〜利用することができる」と書かれているので、箇条書きされている利用方法は、本来法律的に認められている使い方であるということです。
それでは、本資料に記載されている重要な問題とその要点及び結論について紹介したいと思います。
問題1:生成AIの学習に利用される著作物に関して、法律上保護されるべきであるか否か
結論(本資料):AI学習のために行われるものを含め、情報解析の用に供する場合は、法第30条の4に規定する「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に該当すると考えられる。しかし、その後の利用・生成に当たる行為では、該当しない可能性が高く、著作権法に引っかかる可能性がある。
長瀬の見解:個人的に、AIで生成されるコンテンツ(以下、生成物)の著作権は、学習に利用されたデータに基づいて分配されるべきであると考えています。しかし、生成AIの学習が人によって管理されておらず、インターネット上でのクローリングにて学習素材の確保が行われている場合も多く存在します。この場合、生成物の著作権の所在に関して疑問が生まれることとなります。理想論では、〇〇%以上の割合で、権利者が同一の著作物が学習に利用されている場合、権利者に対してある程度の報酬や使用料を払う必要があるといった様な法整備が考えられると思いますが、特に深層学習を利用して作られるAIは、中身がブラックボックスであり、出力される結果から学習素材を見極めることが極めて困難であることも事実です。そもそも、学習素材を公開する法律が立法され、学習データが公開されたところで、それが本当にAIに学習させたものと同一であるかに関しては、自己責任となってしまう為、立証は難しいと思われます。また、このような法律が立法される前に著作物を学習したAIの生成物によって、再度別のAIを学習した場合、その学習データや生成物における権利関係や処分対象は、よりあやふやになってしまうでしょう。
以上をまとめると、現実的に学習段階における法律的な保護は、立証の観点から難しく、世界的な同意が得られるまでは困難なのではないかというのが個人的な見解です。
問題2:AI学習に際して著作権侵害が生じた際に、権利者による差止請求等が認められ得る範囲について
結論1(本資料):当該 AI 学習に用いられる学習用データセットからの当該著作物の除去が、将来の侵害行為の予防措置の請求として認められ得ると考えられる。
結論2(本資料): 学習済みモデルに関して、その廃棄請求は通常認められないと考えられる。但し、学習データである生成物と類似性のある生成物を高確率で生成する状態にある場合、当該学習済モデルが学習データである著作物の複製物であると評価される場合も考えられ、認められる場合もあるだろう。
長瀬の見解:現在、OpenAI創業者のサム・アルトマンは、ChatGPTの様な大規模生成AIは、インターネット上の膨大なデータをクローリングなどを用いてインプットしなければ、作ることができないといった発言をしており、その一方で限られたデータでも同様の性能の生成AIを作ることができるといった意見を持つ人も多いのが現状です。真相はまだ誰もわからない中で、著作権侵害のあった生成AIに対してどこまで制限を請求できるかという問題について判断することは非常に難しいと思います。また、生成AIの特性上、学習するコンテンツが文字なのか音声なの画像なのかで、その出力に大きな変化があると考えているので、個人的には「生成AI」と言うカテゴリでルールを作ることはとても反対です。さて、上記の”法的措置”は著作権侵害された方が納得し、被害を最小限に抑えることができる行為というのが求められます。一方で、「権利を侵害した方が一方的に悪いので、これまでお金を注ぎ込んで学習させてやっと完成させたAIを使えなくしてください」と言うのは少し不公平な気がします。そこは社会通念的に「まあ、この程度であればお互い納得するでしょう」と言うラインを見つけるのが妥当です。では該当著作物がそのAIに与えているナッジ・影響力の強さなどを鑑みると、生成AIが大規模になればなるほどその影響力は低下することとなり、どこまでその措置を行うべきかという問題を解決する必要があります。今後の法的な措置に関する決断はその影響力も鑑みた妥当な措置が行われるべきだと思います。その方法については、ここで論じてしまうとより長くなってしまうので、また別のBlogにて論じたいと思います。また、現実的なソリューションとしては、該当著作物が学習データに入っていなければ、著作物侵害が起こることがないので、該当著作物を生成AIの学習データより除去することが最も現実的であると私も思います。一方で、生成AIが学習済みであった場合、該当著作物を抜いたデータで再学習しなくてはいけない可能性もあり、かなりのコストがかかってしまうので、その判断もやはり容易ではないと思います。
問題3: 著作権者は自身の著作物がAI学習に利用されることを拒絶することは可能か
結論(本資料):反対の意思のみで、権利制限規定の対象から除外されことは認められないと考えられる。但し、その意思表示をする事によって、著作権侵害を生じさせる懸念は低減される。
長瀬の見解:この問題を考える上で、私が重要だと思うことは、インターネットという場所がどの様な場所であるべきかということを再度確認することが必要であると思います。1990年代後半、民間に浸透し始めた頃のインターネットというのは、オープンな場所であり、みんなが情報共有やデータ送信の為に作られたものであったと言えるのではないでしょうか。そもそもネットワークを利用した情報送受信は、インターネットが存在する前より行われており、個別に存在していたネットワークを統一することでできたインターネットという存在は、それ自体が公共のものであるという認識をしても間違っているとは言えないと思います。そして、この点を理解した上でインターネット上に著作物を公開するという意味を考えなくてはいけないと思います。一方で、我々の生活の一部となっているインターネットは、1990年代後半の技術・使用用途が大幅に変化していることも事実です。特にSNSは、個人間のコミュニケーションツールとして成り立っており、それを公の場所と呼ぶ事はできないとも思います。こうした現状の中で、まずインターネット上に存在する著作物が生成AIの学習を、意思表示のみで拒絶できるかという問題については、本資料と同様、不可能だとだと考えています。なぜならば、インターネットはあくまで公の場であると考えているからです。ただ、個人的にはイントラネット(内部ネットワーク)の発展と、イントラネットとインターネットの接続における制限技術の発展にこの問題の解決を期待しています。よりデジタルにおけるプライバシーが求められる昨今、より小規模なイントラネットというネットワークを通してインターネットに接続する様な形が作られることによって、プライバシーや情報のクローリングなどの問題を回避することができるのではないかと考えています。すでに人間かどうかを確認するキャプチャなどが多くのウェブサイトで導入されていますが、ウェブサイト自体をイントラネットに置き、外部の人がそのイントラネットにアクセスする際に何らかの制限をもうけることによって、生成AIの学習を防ぐことができる可能性があると思います。インターネットとイントラネットの存在意義を再定義し、明確にすることで、多少数を減らすことができる可能性を信じたいと思います。
次回は、生成・利用段階における問題を考察したいと思います。
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